帰りがてらレシピを検索して、メニューを肉じゃがに決めると、スーパーに寄り買い物終えておく。
肉じゃがにしたのは検索したサイトに、離乳食ととり分けしやすいと書かれていたからだ。マンションへ帰ると、すぐに夕飯の仕度を始めた。

それに花蓮は和食が好きらしく、普段から夕食は煮物や魚が多い。
花蓮は胃腸が強くなく、洋食は味は好きだが、和食の方が消化がよくて好むのだそうだ。

そうならそうと早く知りたかった。

イタリアンやフレンチのデートばかりに連れて行っていた自分が恨めしい。
いつも残さないし美味しそうに食べるから、好きなのだと思い込んでいた。

留守の間にハウスキーパーが来ていたので、掃除と洗濯物は終わっていた。
シャツの袖を捲ると、米をとぎ、タイマーをかけるとおかずの準備にとりかかった。

じゃがいもを剥き、玉ねぎ、にんじん、牛肉に白滝を入れた。
火入れを終えると、味付けをする前に歩那の分だけ取り分けた。取り分けた分は、歩那の小さな口に合うようにさらに細かく切り、別の鍋で柔らかく煮込んだ。これは花蓮に教わった事だ。

自分の中の花蓮はまだ学生の頃の印象が強くて、働き、子育てをする彼女は以前のイメージとは違った。
今の花蓮は控えめで大人しいだけではない。

責任感があり、なんでも自分で考え行動しようとするところに逞しさを感じた。

疲れて帰宅してご飯が出来ていたら、喜んでくれるだろうか。

その時の花蓮の笑顔を想像したら、準備が楽しくなった。鼻歌まじりで料理を進め、味噌汁とサラダも作る。
自分ひとりでは手間だし全く家事などやる気にならないが、ふたりのためなら苦ではない。

花蓮には喜んでほしいし、少しでも体を休めて貰いたい。

歩那は抱っこをせがむことが増えてきた。
基本の世話やここぞというときは自分では駄目だが、その変化は自分の存在を認めて貰えているようでやる気に繋がる。
作り終えると、丁度花蓮の迎えの時間となった。

エプロンを外すと、もう一度背広を羽織り車のキーを掴む。
今日は特別な日ではないが、三人で甘い物が食べたくなった。

そう言えば、自社で開催しているプリンフェスタの広告を花蓮が舐めるように見ていたのを思いだす。十日間限定で、全国各地のご当地プリンを集めた物産展だ。

出掛けがけにコンシェルジュに数種類取り寄せておくように伝え、地下駐車場へと足を向けた。