(もんねって、何!)

そんな少年のような可愛いセリフを言ったって……!

(うう、可愛いとか反則! きゅんきゅんする……!)

あざとい態度を気にしないようにするのは難しかった。
片眉をさげ、ふふんと笑った昴の色気はとんでもない。

「ヤキモキさせてごめんね。俺が好きなのは花蓮だけだよ。もちろん歩那も愛らしいけれど、花蓮だけは本当に特別」

「っだ、だから、妬いてなんか」

「うん。気にしてくれただけでも嬉しいよ。最高に幸せ」

互いのおでこをコツンと合わせると、昴は満たされた顔をした。
精錬された顔が目の前に迫る。その頬に大きな窓から射し込んだ朝日が当たり、さらにきらきらとして見えた。
鼻先が触れあう。

ふ、と唇に吐息がかかり、頭がぼーっとした。
「何度も言ってるけどさ、俺はもう後悔したくなくて、正直に生きるって決めた。花蓮も……それに応えてくれたら嬉しい」
嘘などつきたくない。

目の前にいる愛しい人を、せいいっぱい愛したい。
それは花蓮も一緒だ。
昴には幸せになって欲しくて、仕事も応援したい。それには、困難だとわかっている自分を押し付けることなどできない。
これから先、順調であって当たり前のはずの、昴の人生の邪魔はしたくないってだけなのだ。

「妬きもちだった……?」

「……ちょっと、う、羨ましかったといいますか……その、仲よさげで!」

妬きもちだなんて大袈裟な物ではない。
緊張しながらそれだけを言うと、昴はくしゃりと笑う。

ちょっと泣いているようにも見えて、切なくなった。

「その、わたしも仲良くできたらいいなって……」

「ねえ、キスしていい? したいな。嬉しすぎて我慢出来い」

互いの纏う空気が甘酸っぱくて、花蓮も素直にならざるをえない。
こくりと頷くと、昴はすっと顔を傾けて唇を合わせた。