泣いてしまったのか、控えめに鼻をすする音がする。

昴はパトカーの赤色灯を睨んだ。
怒りでどうにかなりそうだ。
彼女を傷つけた人間が、ただただ許せない。

柔らかい髪をなで、腕の中の花蓮が無事なことに心底安堵した。強くだきしめて、安心できるようにと念じる。

「花蓮……俺が傍にいるよ」

もう二度とこんな思いをさせたくない。

彼女のこころに自分ではない男が居座っていようと、誰の子供を育てていようと関係がない。歩那は彼女の子供で、そして自分は花蓮を愛している。それだけでいいじゃないか。

花蓮が恋人として無理だというのならば、パトロンでも構わないとさえ思う。
都合の良い存在でも側にいたい。それで力になれるのならば本望だ。

花蓮がいなくなってから、他の女とも交際してみようかと、見合い話も受けたし自棄になってパーティーで声をかけられた女性ともデートをしてことがあった。

しかし、昴の気持ちを焦がすような女性は現れなかった。
やはり花蓮しかいない。

誰といても彼女と比べてしまい、欲しいのは花蓮だけと細胞が叫ぶ。
報われなくてもいいと思えるほど、愛していた。

「大丈夫。ーーーー大丈夫だよ」

なんども繰り返すと、徐々に花蓮の震えは治まった。

(傍にいれるのならばどんな形でもいい。花蓮をぜったいに幸せにする)

昴は花蓮を抱きしめながら、繰り返し誓った。