結婚という言葉を出すだけで気持ちが落ちこむ。
「俺が? 冴子と?」
「え、ええ……業務提携も、されてましたし……その、学生の頃からずっと想いあっていたじゃないですか」
美人な冴子は周囲からもお似合いだと言われていて、公認のカップルだった。
惨めだから、これ以上言わせないでほしい。
少々憮然としながら告げると、昴は顔を覆って項垂れた。
「ああ、嘘だろ……」
嘘? 嘘とはどういうことだろう。
「花蓮、俺はね、きみと離れてからずっと後悔していたんだ」
「すべてわたしのわがままだったんですし、昴さんが気に病むことなど……」
「違う」
語尾を遮り、昴は強く言った。
「違うんだ。俺が後悔しているのは、未来ばかりを気にして目の前の君をしっかりみていなかったことだ。おかげで君は、とんでもない勘違いをしていた」
(ーーーーえ?)
「花蓮を幸せにするには、誰にも邪魔をされないように俺自身の力を付けなくてはいけなかった。桜杜の業績が悪化すれば、俺などすぐに切られてしまう存在だったのはわかっていた?」
自分達の関係が危ういのはなんとなくわかっていたので、花蓮はこくりと頷く。
「花蓮は大学に入ったときに、俺に教えてくれたね。親に愛されない家は寂しい、早く自立して家を出て、暖かい家庭をつくりたいのだと。俺はそれを聞いて早く一人前になって、花蓮を迎えに行くと決意したんだ。
中々会えないのも我慢の時期だと思って、とにかく仕事を第一にした。
その結果、花蓮の心が離れてしまうのは想定外だったんだけどね……」
「俺が? 冴子と?」
「え、ええ……業務提携も、されてましたし……その、学生の頃からずっと想いあっていたじゃないですか」
美人な冴子は周囲からもお似合いだと言われていて、公認のカップルだった。
惨めだから、これ以上言わせないでほしい。
少々憮然としながら告げると、昴は顔を覆って項垂れた。
「ああ、嘘だろ……」
嘘? 嘘とはどういうことだろう。
「花蓮、俺はね、きみと離れてからずっと後悔していたんだ」
「すべてわたしのわがままだったんですし、昴さんが気に病むことなど……」
「違う」
語尾を遮り、昴は強く言った。
「違うんだ。俺が後悔しているのは、未来ばかりを気にして目の前の君をしっかりみていなかったことだ。おかげで君は、とんでもない勘違いをしていた」
(ーーーーえ?)
「花蓮を幸せにするには、誰にも邪魔をされないように俺自身の力を付けなくてはいけなかった。桜杜の業績が悪化すれば、俺などすぐに切られてしまう存在だったのはわかっていた?」
自分達の関係が危ういのはなんとなくわかっていたので、花蓮はこくりと頷く。
「花蓮は大学に入ったときに、俺に教えてくれたね。親に愛されない家は寂しい、早く自立して家を出て、暖かい家庭をつくりたいのだと。俺はそれを聞いて早く一人前になって、花蓮を迎えに行くと決意したんだ。
中々会えないのも我慢の時期だと思って、とにかく仕事を第一にした。
その結果、花蓮の心が離れてしまうのは想定外だったんだけどね……」



