家をでるとき、香に告げられたのは昴と冴子の話だ。
『婚約者とではなく外で男をたらし込んで子供をつくるなんて、母親と一緒ね。
いいわ。その子を育てたいなら勝手にすればいい。その代わり早間の敷居は二度と跨がないで。桜杜との婚約も破棄よ。あの家を頼ることも許さないわ。
このことを誰かに喋ってごらんなさい、あんたが大好きな昴さんの家とは即刻手を切りますから。
昴さんもせいせいしたでしょうね。本当はずっと、相賀コーポレーションの娘さんと結婚したかったそうよ。あなたがいなくなればきっと喜ぶわ』
皮肉たっぷりにほくそ笑んだ香の顔を忘れられない。
その時の傷をいまだに引きずっていて、ふと気分が落ちたときには思いだし、その度に落ち込んだ。
どれほど恋人として時を過ごそうと、ふたりを引き裂いた自分が、冴子より思われることなどあり得なかった。
家を出て少しした頃、ニュースで桜杜ホールディングスと相賀コーポレーションが業務提携をした事を知った。
やっと昴は本当に好きな人と結ばれたのだと知り、悲しさと安堵が入り混じった。
これで本当に諦めがつく。
幸せになってほしい。
昴に思うのはそれだけだった。
しかし、昴は意味がわからないと首を傾げる。
「どういうこと?」
「昴さんは優しいから、婚約者だったわたしを放っておけなかったんですよね? でも、もう大丈夫です。わたしも成長したんですよ。ひとりでもなんとかして見せます。冴子さんとの邪魔をしようなんて思っていませんので……」
「冴子?!」
昴の素っ頓狂な声に花蓮も目を丸くする。
「なんで、ここで冴子がでてくるの?」
「え、だって、結婚……を前提にお付き合いされているんですよね? もう間近だとネットニュースでも見かけましたし……」
『婚約者とではなく外で男をたらし込んで子供をつくるなんて、母親と一緒ね。
いいわ。その子を育てたいなら勝手にすればいい。その代わり早間の敷居は二度と跨がないで。桜杜との婚約も破棄よ。あの家を頼ることも許さないわ。
このことを誰かに喋ってごらんなさい、あんたが大好きな昴さんの家とは即刻手を切りますから。
昴さんもせいせいしたでしょうね。本当はずっと、相賀コーポレーションの娘さんと結婚したかったそうよ。あなたがいなくなればきっと喜ぶわ』
皮肉たっぷりにほくそ笑んだ香の顔を忘れられない。
その時の傷をいまだに引きずっていて、ふと気分が落ちたときには思いだし、その度に落ち込んだ。
どれほど恋人として時を過ごそうと、ふたりを引き裂いた自分が、冴子より思われることなどあり得なかった。
家を出て少しした頃、ニュースで桜杜ホールディングスと相賀コーポレーションが業務提携をした事を知った。
やっと昴は本当に好きな人と結ばれたのだと知り、悲しさと安堵が入り混じった。
これで本当に諦めがつく。
幸せになってほしい。
昴に思うのはそれだけだった。
しかし、昴は意味がわからないと首を傾げる。
「どういうこと?」
「昴さんは優しいから、婚約者だったわたしを放っておけなかったんですよね? でも、もう大丈夫です。わたしも成長したんですよ。ひとりでもなんとかして見せます。冴子さんとの邪魔をしようなんて思っていませんので……」
「冴子?!」
昴の素っ頓狂な声に花蓮も目を丸くする。
「なんで、ここで冴子がでてくるの?」
「え、だって、結婚……を前提にお付き合いされているんですよね? もう間近だとネットニュースでも見かけましたし……」



