「昴さんっ……待って……あっ!」

荷物をまとめる手を止めようと腕に触れたら、足元がふらついてそのまま体当たりしてしまった。
うっかり抱きついてしまい、赤面する。

「大丈夫か」

「はい、すみません。あの、お気持ちは嬉しいです。でも、お世話になるわけにはいきません」

関係を正式に清算するために会いにきただろうに、これでは余計に迷惑をかけてしまう。
すると、昴は支えるために添えていた腕に力を込めた。

ぐっと腰が引き寄せられ、体が密着する。

「君たちを、このままここに住まわせておくなんて俺が無理だ。花蓮と歩那を危険な目に合わせたくない」

「なぜです……? 早間は……わたしはあなたに酷い事をしたはずです。そんな、助けてもらうなんて……」

首を振って拒否をすると、今度は頬を挟まれてしまった。

温かい手にぷにとほっぺたが潰されて、昴の透き通る瞳が本心を暴くように真っ正面から貫いた。
微笑みはとても甘く、心に揺さぶりをかけた。

「今日は疲れただろう? ゆっくりできる場所が必要だと思うよ。落ち着いたら、これからのことは一緒に考えよう」

昴は花蓮の背中をゆるりとなで諭す。

誰かに抱きしめて貰うのは、赤ん坊以来かもしれない。
父からも母からも記憶はないし、昴だってずっと触れようとしなかった。
なのに、今更なぜ優しくするの。

大きな胸はあったかくて、ずっと顔を埋めていたい心地よさだ。