「この恩知らず!」

香はレコーダーを奪い取ろうととびかかってくる。
昴はそれをさっと避けて、花蓮と歩那を背中に隠した。

「うわぁん!」

大きな声にびっくりした歩那が泣いてしまう。

「提携解除? 望むところです。しかしL×Oは存続させてもらいますよ。
早間はアイデアを出しただけでしょう。経営主体は桜杜であれは我々の事業だ。今までマージンを払い続けてきただけでありがたいと思ってくださいよ。
もちろん契約があるので、違約金があるというなら払いましょう。しかし私怨でそこで働く従業員や取引先にまで影響がでるようなことは絶対に許しません」

「そ、それはどうするつもりだ……」

狼狽える勲に、昴は冷酷な目を向けた。

「――早間さんから学んだことはもちろんあって、感謝しています。香さんも不幸だった。その点は同情します。でも、あなたがたが今まで娘ふたりに行っていた仕打ちは許されるものじゃない! その罪を、このまま葬れると思わないでいただきたい」

香は髪を乱したままガクリと膝をついた。

「花蓮、行こう。歩那おいで、もう怖いことはないよ」

昴は歩那を抱きしめると花蓮の肩を抱いて家をでた。