「わかってます。昴さんがわたしたちを大切に思ってくれていることは、よくわかってるんです……父と同じだなんて思うはずがありません。そうではなくて……」

「一時だけの父親でいいなんて嘘だよ。本当はこの先もずっとそうでありたい」

「昴さん」

「諦めたくない。ここで終わりになんかしたくない。俺は花蓮以外考えられない。くそっ、どうして俺はもっと早くから気持ちを伝えてこなかったんだろう……気持ちが揺れているのはわかっているんだ。俺を選んでくれ。戻ってこない男なんて、俺が忘れさせてやる。だから――」

嘘をついていたことをまずは謝って、順序立ててゆっくり話そうと思ってたのに、ただ好きだという気持ちだけが爆発したように口をついてでた。

「昴さんより大切な人なんていません！　昴さん以外を好きになったことなど、これまで一度もないです。わたしだってずっと、あなただけを思っていました！」

「花蓮……？　どういうこと？」

好きで好きで、ずっと気持ちを押し殺してきた。
きっと昴より、想う期間は長い。

「歩那はわたしの子供ではないの！　お姉ちゃんと大樹さんとの子供で……わたしは、二度と桜杜と関わらないという条件をのんで、歩那を引き取ったんです。わたしは、昴さんにずっと嘘を……」

顔を見ることができない。
これで、信頼も愛情も失ってしまうのかと思うと怖い。

「嘘？」

呆然と呟かれた言葉がやけに無機質に聞こえた。
幸せな夢の終わりの合図に感じて、ぶるりと体を震わせた。