体調がかなり良くなり、私は夜も起きていられるようになった。
 キスをもらうためにもこれは夜這いに行くしかないとバイオレットに言うと、「そんなの前からやってたじゃん」と飽きられた。
 確かに妖精の頃は、フィオンの寝顔を見るのが好きでよく夜に部屋へ遊びに行っていたけれど。
 しかし、この姿でフィオンの寝室へ潜り込むとなると大仕事だ。
 バルコニーで月の光を浴びながら、どうやってフィオンの寝室へ行こうかと悩んでいると、いつかの小人がやってきた。
「そうだ! あなたにお願いすればいいんだ! 私をあの部屋に連れて行ってくれない?」
 前のめりでフィオンの部屋を指差しお願いすると、小人は驚きながらも「何をくれるんじゃい」と答えてくれた。
「そうね、明日ビスケットをあげる」
 ビスケットは、メリーとのおやつに出るお菓子だ。小人用に少し残しておこう。
「まぁいいじゃろ」
 そう言うと着いてこいとばかりに私を振り返りながらバルコニーとドアの堺の隙間に入って行った。
 私のこの体で通れるかしら。
 一瞬躊躇うと、隙間からひょこっと小人が顔を出す。明らかに狭い空間から大きな顔が出ているのを見て、まぁ行けるだろうと隙間へ手を差し込む。すんなりとその中に入ったのを確認して、私は安心して隙間へ体を入れたのだった。