君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

「こんなにしてもらって申し訳ないから、せめてお掃除とかお料理とか奥さんらしいことをしなきゃと思って」

 私に大学教授の妻が務まるかは自信がない。

 でも、普通の妻としてなら、できることがたくさんあると思ったから。

 聡一朗さんは少し戸惑うように間を置いた。

「ありがとう。けど家事なんてしてもらう必要はないよ。俺たちは利害の一致だけで結婚した関係なんだから」
「……」
「俺は若い君の人生を奪った。だから、どんなことも叶えるよう努めるし、金銭面でも苦労はさせない。君は好きなことをして自由に暮らしてくれればいい。家事なんかして無理に俺に尽くす必要もない」

 聡一朗さんの言葉は、私を心から気遣ってくれる言葉だった。

 私は感謝を示すように彼に微笑んで見せたけれど……心の中では「そうじゃない、そういうことじゃない」って繰り返していた。

聡一朗さん、私はもっとあなたを――。

でも、私たちはそういう関係なんだ……。

安田さんと別れた後、聡一朗さんは結婚祝いということで食事に連れて行ってくださった。

高級なコース料理だ。

でも悶々としていた私は、あまり美味しいと思うことができなかった。