君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

落ち着いた低い声が聞こえた。
背の高い男性が、私たちのそばに立って声を掛けてきた。

その人を見るなり、女学生さんは急に大人しくなって「あ、はい……! やってみます」とキーボードを操作し始めた。

「よほど染み込んでいなければデータまでは無事だろう。どうだ?」
「はい……。あ、出てきました」
「直前まで自動回復も働いているはずだ」

女学生さんの顔に安堵の笑みが広がった。どうやら問題はなかったらしい。

ディスプレイには汚れが残っているけれど、データが無事なのは不幸中の幸いと言っていいのかな……。

とは言っても高い品物なのだから申し訳ない。やっぱり弁償した方が……。
と私が思っていたら、男性が厳しい口調で女学生に言った。

「図書館で飲食が禁止なのは基本ルールだろう? こういうことがあるから設けられているんだ。解ったか?」
「は、はい……」

しゅんとなってうなずく女学生さん。
「以後気を付けるように」と言うと、男性は去って行く。
その毅然とした後ろ姿を私は茫然と見送っていたが、はっとなって追いかけた。

「すみません、ありがとうございました」

呼び止めると、男性は振り返って無表情で私を見下ろした。

改めて向き合うと、ものすごく整った顔立ちをされていることに気付く。