けれども聡一朗さんは全然乗り気ではないようで「俺は遠慮したんだが」と繰り返して、

「天田教授を筆頭に大学がどうしても開きたいというものだからね。面倒この上ないが」

 と溜息を吐く。

 大学教授の間でも上下関係は存在している。

 特に主任教授である天田教授は聡一朗さんの学生時代の恩師でもあるため、断り辛そうだった。
 ちなみに、天田教授はあの紗英子さんのお父様でもある。

「あの、それで私になにか関係が……?」
「ああ、実はその祝賀会に妻である君も招待を受けてね」
「え!」
「かなり煌びやかなものにするそうなんだ。それで君はドレスのようなものを持っているかと思ってね」
「ドレス!?」
「やっぱり嫌かな? 結婚早々、面倒なことを頼んで申し訳ないのだが」
「い、いえ」

 こういう時のための妻。
 それがこの契約婚に課せられた私の条件だ。