君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

「たしかに先生はあなたを気に入ったかもしれないわ。じゃあ疑問なんだけれど、なぜ結婚したことをオープンにしないの? 必要最低限な関係者にしか言わずにいるのよ? 周りから、あなたの学歴や若さをとやかく言われるのを解かっているからじゃないの?」

 聡一朗さんは今や著名人と言ってもいい存在だけれども、結婚については公表していなかった。
 もちろん、プライベートや仕事の関連者には報せている。
 でも、SNSやメディア上での発表を控えたのは、世間からの煩わしい反響を厭ってのことだった。

 もし、私の経歴や若さのせいで、とやかく詮索されることを聡一朗さんが気にしているとしたら……。

「あなた、世界レベルの大学教授の妻がどれほど重要ある立場なのか、ちゃんと理解している? あなた程度の学歴や人生経験で務まると思っている?」
「……」
「安っぽい感情だけでこなせるほど、大学教授の妻は楽じゃないのよ。すぐに先生も目を覚ますに違いないわ。まぁ、あなたは捨てられるその時まで、せいぜいお勉強をがんばるといいわ」

 弱り切った最後を仕留めるかのように吐き捨てると、押し黙ってなにも言えなくなってしまった私を残して紗英子さんはヒールを鳴らして出て行った。