事務所に戻った私の心はなんだかふわふわしていた。

温かい気持ちと切ない気持ち。
ふたつの気持ちが胸をいっぱいにしていて、おかしな高揚感があった。
聡一朗さんの過去を教えてもらって、驚いたのかもしれない。

お姉さんか。
私は一人っ子だから、姉弟がいる感覚がよく解からない。

お姉さんって、どんな方だったんだろう。
きっと聡一朗さんに似て聡明で綺麗な方だったんだろうな。

聡一朗さんとは、どんなふうに触れ合っていたのだろう。
あの冷静で隙のない感じの聡一朗さんが弟かぁ。
そんな感じはしないけれど、お姉さんといる時は少しだけ砕けたり、冗談を言ったりしたのかな。

なんていろいろ想像していたら、聡一朗さんが初めて見せてくれた微笑を急に思い出して、ドキリとなった。

お姉さんが亡くなる前は、あんなふうに笑ったりしていたのかな……。