君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

いつもは冷静で無表情に見える顔に明らかな悲しみの影が差していた。

ああ、ヴェールの正体はこれだったんだな――そう瞬時に私は納得する。

聡一朗さんの心を覆い隠すようなヴェールは、誰よりも恩があるお姉さんを失ってしまった悔しさと悲しさだったんだ。

過去を思い出すように遠くを見つめる瞳は、お姉さんを想っている。
でもそこに懐かしさや感謝の念はない。
ただ、悲しい色に染まっているだけ――。

不意に、驚くほど突然に、私の目からほろりと一粒涙がこぼれた。

「……ごめんなさい」

次から次へと溢れてくる涙を抑えることが出来なくて、私は隠すように頭を下げた。

私に泣く資格なんかない。
大切な人を失った悲しみは、失った当人にしか解らないのに。
でもそう考えたら、余計に涙が止まらなくなった。

おかしいな。両親が死んだ時さんざん泣いて、涙腺はもう壊れてしまったと思っていたのに。