君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

「美良さんは実は高校卒業してからは大学に行かず、清掃員のお仕事をされていたんですよ。意外ですよねぇ」
「まぁ清掃員のお仕事を。お若いのに大変でしたね」

 と、女性は少し憐れむよう口調になる。
 それまで私を見つめていた好意的な眼差しに、不審な色が生まれる。

 秘密にするつもりはなかったけれど、清掃員をしていたことはあまり表面に出すつもりはなかった。
 誇りを持てる仕事とは思っているけれども、大学教授の妻が就いていた職業として格好がつくかといえば、疑問が生じるからだ。

 どう返そうと言葉に詰まっていると、

「そうなんですよ。とても一生懸命働いている姿を私が一方的に見初めましてね、遠慮しきりの彼女に年甲斐もなく猛アタックをかけてしまいました。前職の甲斐あってかとてもきれい好きでしてね、私も心地よく住まわせてもらっていますよ」

 聡一朗さんの方がまったく気にした風もなく返してくれた。