君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

「本は役に立ったかな」
「はい、楽しく読ませていただきました」
「確か英語だったと思うが、訳して読んだのかい」
「はい、どうにか」
「それは感心だ」

聡一朗さんはふっと口端を上げた。
微かな反応だったけれど嬉しくなって少し勇気が出た。

「あ、あのこれ、つまらないものなんですが」

私は手にしていた紙袋を突き出した。

「これはなんだい?」
「私が作ったクッキーです」
「……」

無言の返しに一気に焦りが押し寄せる。
ああやっぱり手作りクッキーなんて野暮ったかったかなぁ……!

「う、うち洋菓子店を営んでいたんですが、そこで私もクッキーを作って出してて。結構評判が良かったので……。私が用意できるお礼といったらお菓子くらいだったんですけれど、一流大学の教授さんだからきっと高いお店のお菓子に慣れているだろうなと思ったら、どれにしようか悩んでしまって、自分の作ったものなら捨てられても別にいいかと思って……ごめんなさい、本当につまらないもので」