君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

あの毅然とした高身長の姿が現れた。
今日は高そうなネクタイを締めて、エリート会社員が着ていそうなグレイのベストで身を固めている。
理知的な端正な顔は、少し驚くような表情を浮かべて私を見下ろしていた。

大学教授としても十分貫禄があるけれども、どこか大きな会社の経営者と言われても違和感がない。
そんな凛として惚れ惚れするような存在感があった。

私はすっかり動揺してしまって、しどろもどろになりながら口を開いた。

「あ、あの、この間は困ったところを助けていただき、ありがとうございました」

ひゃーなんだその言い方……! 恩返しに来たわけじゃないんだから! と内心であたふたしている私とは対照的に、聡一朗さんはいたって冷静でいる。
冷静過ぎて反応がない。

私は不安になって続けた。

「あ、あの覚えていらっしゃいますか、本を貸していただいた」
「ああ、もちろん覚えているよ」
「よ、よかった」

ただの怪しい女に思われずにすんだ。