君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

初めて足を踏み入れた棟の最上階は、さながら高級ホテルのような内装だった。

カーペットも事務的な無地じゃなくて華やかな柄模様。
廊下に生花が活けられているところも違う。
汚れひとつなく磨き上げられた窓からは都内を一望できて、本当にホテルのようだ。

七〇五号室 藤沢聡一朗。

名札を確認して、一呼吸。

そっとノックすると、「はい」と硬質な声が聞こえた。

一週間前に耳にした、あの低くて落ち着きのある声だ。

聞いた瞬間、胸がドキドキしてきゅっと痛くなる。

「お忙しいところ失礼いたします。学生の者ではないのですが、お返ししたいものがあって参りました」

と扉越しに伝えたけれども、なんてか細い声。
聞こえたかな、と不安になっていると、ガチャリと扉が開いた。