君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

「実は奥様は、自分が熱を出していることはご主人様には内緒にしてほしいとおっしゃられて」
「なんだって?」
「ご主人様は今夜はお友達との約束があるから、自分のせいで台無しにしたくはないから、と」
「……」
「とはおっしゃっても、お一人でとても心細そうなのは見てとれたので、奥様には申し訳ないのですがご連絡させていただきました」
「解かりました。本当にどうもありがとう。山本さんもいろいろ気遣いをかけさせて申し訳なかった。このことはこちらで上手くやっておくので、ご心配なさらず」

 丁重に挨拶をかわして、俺は通話を切った。

「ご注文はお決まりですか?」

 店員がやってきたが、俺はすでに美良が寝込んでいると聞いた時からジャケットを羽織り、会計する用意をしていた。

 丁寧に詫びを言い、俺は足早に店を出ていった。