君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜

 着信はハウスキーパーを任せている山本さんからだった。
 よく出来た人で、滅多なことでは連絡してこないのだが、なにかあったのだろうか。

 タップすると、業務的な挨拶のあと、たどたどしい口調が続いた。

「お忙しいところをすみません、あの実は奥様の件で」
「妻の?」

 メニューをめくる手が止まった。

「実は大学で体調が悪くなり倒れられたとのことで」
「なんだって?」

 思わず声が強張ってしまう。

「それで、妻は今どうしている?」
「ご自身で帰ってこられて、今はもう自室でお休みされています。ひどい熱で……」
「病院には?」
「行かれていないようです。そこまでではないから、と。眠れば大丈夫だからと気丈にされていたんですが、私も心配でいろいろお手伝いさせていただいておりましたらこの時間になりました。ご報告が遅れて申し訳ありません」
「いや、とんでもない。時間外になるのにありがとうございます」

 山本さんは恐縮すると、少し言いづらそうに続けた。