運命の人と笑える日々を

「寒くないの?」

「……へ?」


いきなり話しかけられて間抜けな声がもれる。

気付けばさっきまで白で埋まっていた私の視界は、黒色のフードを捉えていた。

暗くて顔が分からないけど、声的に男の人?


「ひゃっ」

「耳、冷た」


またいきなり耳を触られて、変な声が出る。

そしてそのままぺたぺたと顔を触られる。

声をかけられるまで、気付かなかった。

てかこの人誰……。

唖然としている私の両頬に彼は両手を添える。


「立てる?」

「え、っと……」

「立てない?じゃあ手伝う」


今度は困惑する私。

そんな私をよそに、彼は会話を進める。

頬から離れた彼の手は、今度は私の手を握って私を立たせた。

公園の街灯が彼の顔を照らす。

必然的に浮かび上がる顔に、私は見覚えがあった。


「大丈夫?」

「あ、うん」

「そう? よかったぁ」


そうふわりと笑った彼は、音昏(ねぐれ)くんだった。