私は珍しく国王より呼び出されて謁見の間にいた。
 玉座に深く座っている国王はなにやら真剣な表情をして私のほうを見つめて、こう告げた。

「婚約者を決めた」

 あ、ついにその時が来たのだと私は覚悟をして国王の次の言葉を待つ。
 一体誰なのか、どこかの王子だろうか、それともどこか国の中の上位貴族とかかな。
 そんな風に思っていたが、出てきた名前は意外な人の名前だった。

「リオネルだ」
「え?」
「お前の護衛騎士をしているリオネル。あいつをクラリスの婚約者にして、未来の国王にしようと思う」

 その言葉を聞いて素直に嬉しくは思ったが、果たしてリオネル様はそれでいいのだろうかと真っ先に思ってしまう。
 しかしどうやらもうすでにリオネル様には話を通しているようで、彼は快諾したのだという。
 そっか、彼は私と一緒になることを受け入れてくれたんだ。
 でも彼は剣の道を諦めて国王として立つことを本当にいいと思っているんだろうか。
 そんな風に思いながら、私はマリエット侯爵家に戻った──



◇◆◇



「ついに決まったそうだな、婚約者が」