「え? 今日はお勉強は休み?」
「はい、息抜きに街に出ましょう」
「でも、まだあの古文書も読まないとだし、それにあの本だって読み込まないと」
「ダメです」

 なぜそこまで頑なに彼は外に連れ出そうとしたのか、私はよくわからなかった──


 リオネル様に半ば強引に連れて来られたのは、街の端っこにある小さな雑貨屋さんのような場所だった。
 扉を開けて中に入ると、いかにもな強面の職人さんがいる。
 ガタイのいいその職人の男性は、お店の奥にあるカウンターの向こう側で何か細かい作業をしている。

「店主、少しお店見て回ってもいいですか?」
「ああ」

 職人の男性はピクリとも笑わず、また声だけでリオネル様だとわかっているのか慣れたような雰囲気で言葉数少なく返事をする。
 そして、リオネル様がなぜ私をここに連れてきたのか、理由が店の棚を見てわかった。

「綺麗……」

 そう、お店にあるいくつかの棚やテーブルにはガラス細工の数々が並んでいる。
 他の店でもガラス細工の品は売っているのだが、その多くはお皿やコップなどの実用品が多い。