リオネル様は私を壁にもたれかけさせると、そのまま走ってパーティー会場へと向かって行く。



 私はしばらく目をつぶってゆらゆらと揺れる意識を保つために必死に耐えていた。
 誰かが私を抱きかかえている気がして少し目を開く。

「──大丈夫ですか?」

 そこにはリオネル様がいて、私の瞳を見つめている。
 青い瞳がこちらをみていて、月明かりに照らされたリオネル様も美しくて、思わず見惚れてしまう。

 毒の耐性があったせいか、もう媚薬の効果はなくなっており、意識もはっきりしていたが、それを言い出せずにいた。
 自分で歩けます、とただ一言そう言えばいいのに、どうしてもその一言が出ない。

「クラリス様、俺をもっと頼ってください」
「え?」
「俺はあなたの護衛騎士ですが、その前に──いや、なんでもありません。マリエット侯爵家に向かいましょう」

 彼は恥ずかしそうに私から目を逸らしてそんな風に言う。
 そんな態度を取られると、勘違いしてしまうじゃない。

 彼のことがちょっと気になってしまって、でもそれは恋なのかどうか。