もう慣れっこではあるから、それとなく受け取って一応お父様に報告はするのだけれど……。

 ただ、今日は一人全く違う内容、つまり私自身に話があるといった様子で声をかけてきた方がいた。

「マリエット侯爵令嬢」
「あら、はじめましてかしら」
「はい、僕は男爵の倅ですからなかなか社交界には出るお金がなく、今日初めて参加したのでご挨拶にと」
「ああ、そうでしか。ぜひ楽しんでください」
「あの、クラリス様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「え? ええ、よろしいですけど」
「ありがとうございます! 僕、クラリス様の舞のファンでして」
「そうでしたか」

 彼はいかにも好青年といった感じで服装も確かに男爵令息なのだろうという、少し質素な服を身に纏っている。
 今日のパーティーは様々な爵位の人間がいると伺っているから、特におかしくはないのだけれど、何か違和感を感じるのはなぜかしら。

「クラリス様は王太子殿下の婚約者様でいらっしゃいますが、寂しくはないのですか?」
「そうですね、寂しくないと言えば嘘になりますが、立派になって戻られると信じておりますので」
「素敵なご関係ですね」