「ごめんごめん!」

 手を合わせて謝る杏ちゃんは、額に汗がじんわり滲んでた。

朝練を終えてきたことを物語っている。


 もうすぐ引退試合も近いっていってたな。

スポーツ万能な杏ちゃんの中学最後の試合は、できれば見届けてあげたい。


 しばらくすると、同じく暑そうに下敷きをうちわ代わりに扇いで教室に入ってきた雛太。


「おはよう、雛太」

 あたしの朝の挨拶は、昨夜のことを思い出させるには十分だったようだ。


なんとなく不機嫌な顔になるのがわかる。



「……はよ」

 そっけない態度は、不安にさせる。



 あたし、やっぱりなにかしちゃったのかな。

あとで杏ちゃんに相談してみよう。


前を向くと同時に、さきほどの福原先生がやってきて出欠を済ませると授業が始まった。