ごめんなさい。

あたしだって今すぐにいきたいんです。


 普段より断然重く感じる瞼は熱を帯びていた。

揺れる視界には心配そうに覗き込むお父さんがうっすら滲む。


「ほら、まだ少し熱い」

 氷水で冷えた白いタオルがおでこにのっけられた。

すこし悔しくてそっと下唇を噛んだ。


「ちゃんと寝るから、お父さん仕事してなよー」


 掛け布団をすこし持ち上げて笑ってみせた。

そんなあたしをみてようやく緩んだお父さんの顔。

大きくてすこし皺のはいった手で頭を撫でられた。


「なんかあったら言うんだよ?」


 こくりと小さくうなずいて、ダイニングにあるパソコンにむかうお父さんの背中を見届けた。


 実はもう微熱程度。

こういうとき一番あたふたするのは他ならぬお父さん。

だけど体が弱ってるときにだれかが近くにいてくれるって、本当はすごく心強い。

風邪を移してしまったら申し訳ないけどね。


不謹慎だけど、お父さんがおうちでできる仕事でよかったって思っちゃうんだ。