優しく風が吹いて、太一さんのコーヒー色の髪が頬をくすぐった。


「…きちんと考えるから、お前のこと」



 不意の太一さんの言葉は、期待していなかっただけに驚いた。

びっくりしすぎて声も出ない。



 チラリと向けられた視線は、意地悪の中に隠れるあの照れた瞳。

すぐ前を向いてしまったけど、ほんのちょっぴり耳が赤くなってた。



 太一さんは喫茶店には戻らず目の前を通って、人目につく商店街を避けてくれた。



ありがとう、って心の中でつぶやいて、またあの香りが漂う背中にしがみつく。