「…凛子さん…」

「なぁにー?」



 お母さんがいてくれてよかったよ。

 たとえあたしのことが分からなくっても、あたしはお母さんのこと知ってる。


「えへへ、…ダイスキ。」

 嫌なキモチは固まっているのに、なんだか胸が温かかった。

こそばゆくて、恥ずかしくって、もう一度膝に顔をうずめて抱きついた。


 制服姿のまましゃがみこんで凛子さんに抱きついてしまっていたけれど、そんなの今は関係ない。

ただこの温度だけが、今のあたしの支え。


「もう、しょうのない子ねぇ」

 くすりと笑ったのが分かった。


 嬉しくて、なんだか目も疲れてしまっていて、ドロンとまどろむ。


勉強、しなくちゃ…。


 頭のどこかで考えていたのに、体はいうことをきかずにそのまま意識が途切れてしまった。