苦しいよ。

 つらいよ。


 ほっぺたも、目も、息も熱い。


「…っひぁ…、っく…」

 こんなに走って息も絶え絶えでも、涙が止まらない。

 立ち止まって何度もこすったら、目の周りまで痛くなってきた。



 自然と足は一つの場所へ向かっていた。


 緑に囲まれた白い大きな建物が、夕陽でオレンジ色に染められていた。

敷地内にはいたるところに芝生やベンチが置かれおり、大きな公園と思わすには十分な程。

くねる道に沿うようにてんてんとある中の一つの白いベンチに、見覚えのある女の人が一人で座っていた。


 ゆっくり近づくと、彼女はあたしに気づいてくれた。


 拒否されてもよかった。

今だけでもいいから、一緒にいてほしかった。


「どうしたの?未来ちゃん」

 綺麗なカールがかった長い髪の人は、まるで空に溶けてしまいそうな笑顔を向けてくれた。

その笑顔にほっとしてしまう。


「…凛子さん」


 せっかくとまった涙も、思い出すようにとめどなくあふれた。


 座っている膝に崩れるように顔をうずめて、あたしは思い切り泣いた。


 突然の出来事に凛子さんはあたふたしていたけれど、なだめるように細い指であたしの頭を何度も撫でてくれた。