フォーチュンクッキー

「図星?」

 イヤらしく笑う怜にキツく睨む。


 本人は、こんなの健全な男子だって言われるのがオチだ。


ため息をひとつついて席を座りなおした。


 いつも一緒にやってくるサトの姿がないのに気づいて、隣の机に腰を落とす怜を見上げた。


「サトは?」

 無意識にペンを回していたらしくて、オレが気づいたときには教科書に少しインクがついてしまっていた。

内心あせってポケットティッシュでインクを拭う。



「太一、なんかあったの?」


 ビクッと肩が震えた。

オレの質問には答えずに質問を返される。


「オレはいいよ。で?」

 口を一文字に結ぶ怜は、なんとなく悲しげに見えた。

ゆっくり口を開き始めた。


「サト、悩んでるみたい…」


 意外だった。

 怜は明るいし、それこそ人の悩みまでブッ飛ばしてしまいそうなくらいパワフルだから、サトという存在までもを照らすようなヤツだ。


 余計にその落ち込み具合が、その肩を小さくさせている。


 二人の問題なら口をはさむべきじゃない。

でも、オレにできることがあるならば。


「…なにに?」


 サトの話になると、怜はいつだって真剣だ。

 それがどんな些細なことでも。


 でも怜は、それきり口を紡いだ。


 あまりにも辛そうで、これ以上聞くことはできなかった。