くすくすと笑うおばちゃんに、お盆を取り上げられて手の中に花火を持たされた。

クルリと回れ右をさせられ、背中をぽんと押される。


「太一くん!」


 おばちゃんが声をかけて、太一さんを振り向かせた。


 あたしはあわてておばさんに助けを求めたけど、時すでに遅し。

背中に彼の気配を感じる。


「どうしたんだ?」

 何食わぬ顔でやってきた太一さんをゆっくり見上げる。


 うう、いきなりすぎるよ~…。


 ドキドキとはやる心臓が、声をさえぎる。


「あ、あああ、あの…っ!」


 緊張しなくなる薬ってないんだろうか?

もらった花火をぎゅっと握り締めた。


「はな…、花火…!」

 持っていた手を太一さんの胸に押し付けて、ぎゅっと目を瞑る。


 どんな顔してるのかさえわからず、ただ言葉だけを待つ。



「…やるか?」


 あたしの思いは少しでも報われるのだろうか?