ガヤガヤともう外は暗いのに、今日だけは活気があふれるこの商店街。


いつもは結ってる二つの髪もなんとなくおろした。


 並ぶお店のウィンドウに映る自分をみて、肩より伸びた髪をさっと手直しした。

 毛先がクセでくるくるしてしまってあまり好きじゃなかった。

けど、あの大きな手で少しでも触れられるこの髪は、今ではちょっとだけ感謝してる。



 夏に向かい始めるこの季節は、昼間は暑くって半袖でも夜はほんのり涼しい。

薄着なことに後悔し始めた。


 駆け込むように待ち合わせの喫茶店に入ると、入れ替わるようにマスターが出て行った。

「もう来ると思うから」

 商店街の少し外れにあるここは、辛うじて一部らしい。

マスターはダンボールひとつを抱えて、どこかのお店を手伝うそうだ。


 何をするかは教えてくれなかったけど、見つける楽しみも増えてあたしはウキウキしてた。



 あたしは一人残った店内をゆっくり眺めた。

広くもないこの空間は、とっても落ち着く。


 言いたくても言えないようなことが、ここにくるとちっぽけな気がしてくる。

頬杖をついて、あたしはただ太一さんを待つ。


遠くから規則正しい足音が聞こえてきた。


次第に近くなるそれは、きっと太一さんだ。


「悪い、待たせたな」

 扉のベルが鳴るのに振り向いて、その人影を確認した。