いつ作ったのかも覚えていないのだけど、それは確かにあたしの書いたもの。


そんな、何気なく作った些細なものを、太一さんはずっと持っていてくれた。


 思わず目頭が熱くなり、ぼろりと一滴零れてしまった。




「……未来…」


 囁く甘い声は、すぐ隣に。

拭う暇もなく、大きな手のひらは生え際を撫でるように、両手であたしの顔を優しく包んでくれた。





「おめでとう」




 それは一瞬にして────



 クセ毛の前髪を優しく撫でるように横へ払うと、隠れた小さな額が露になった。


そして、大きな手のひらのぬくもりを喜ぶように心臓が飛び跳ねる。



 春風よりも、すこし温かい吐息が肌を撫でた瞬間だった。




 ちゅっと音をたてた初めての感触。


すこし乾いた熱い唇は、あたしの額を急速に伝っていく。




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