夢心地の中、太一さんはあたしのクセがある髪に優しく触れる。




「十六歳の誕生日、おめでとう」




 耳元で響いた声と同時に、結っていた髪束がさらさらと動いた。


 どういうこと──……?


 やっぱりいつまでも小さな脳みそが展開に追いつかない。

さっとタイミングよく太一さんが差し出してきた鏡には、いつものあたし。


だけども、すこし違う結わいた髪の付け根。


 赤くて細いリボンが、かわいく揺れていた。



 大分伸びた毛先と一緒に遊ぶように揺れるリボン。

そっと触れてみても、どこかへ消えてしまうことはなかった。


それは同時に、現実と知らせてくれている。


 夢じゃ、ないんだ。



「太一、さん……」


 呟いたその先には、すこし頬を赤くしてにっこり笑った太一さんがいた。


「…これはきっと、お前と出会うためのものだったんだな」


 そういって、ポケットから取り出したのは一枚の紙切れ。

そこには、生まれてから何度も目の当たりにしているあたしの字体で『素敵な出会いがあります』と書かれていた。



「あの……あたし…」