「がんばってね」

「……おう」

 あたしが素直に応援したら、照れ臭そうに頬をかいていた。


 人ごみを掻き分けて昇降口を目の前にし、とうとう別れるクラス前。

雑踏の中、雛太はチラリとあたしを横目で見つめてきた。


「未来は、どうすんだよ」

 部活もやってこなかったし、学校でなにがしたいっていう明確な目標も漠然としていた。


 でも……


「あたしは、もう決めてるの」



 中学の卒業式の日から、ずっと考えていた。

だから、お父さんにも素直に相談して、春休みいっぱい使って多少時間は掛かったけど納得もしてくれた。


「あたし、バイトする!───それでね…」


 まだまだコドモなあたし。

だけど、選択できる範囲は少しずつ広がっている。


 たった十五年しか生きていないあたしには、まだ荷が重すぎることもあるだろうけれど。


「国際電話ができる携帯電話を買いたいんだ」


 とりあえず、小さな目標を目指して。


 ばしっとピースを掲げてキメてみせたのだけど、雛太は相変わらずスルーして「ふうん」と小さく零すだけ。



 もっとリアクションしてくれてもいいと思わない?