不意にすっと離れた体に、あたしは求めるように腕を伸ばした。

でも、それは届かなくて。


「太一さん…あたし、ずっと……」


 あたしの声に、ゆっくりと身体の向きが変わっていく。

まさに、その一瞬はスローモーションのようだった。



 困ったように笑うその瞳は、ほんのり揺れていたのをあたしは知っていた。


それでも送り出すと決めたのは、杏ちゃんや雛太……他の誰でもない。



 このあたし、だ。





「ずっと…大好きです……っ!!」



 ああ、やっと言えた。


 後悔していた言葉。

傷つけてしまったことに変わりはないけれど、あの時、いえなかった想いも全て詰め込んだ。



だからきっと、太一さんも振り向いてくれたんだ。




 手を挙げて、まぶしいくらいのその笑顔が、



あたしの宝物。



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