トクン、

それは、静かな湖面に一滴涙を落としたように、水面が揺れる想いだった。



「二年でいい。絶対、オレは帰ってくるから……」



 ずっと、欲しかった。

 あたしの心にあるだけの『スキ』というキモチ。

それと、『スキ』といってくれた太一さんの言葉。


 二つもあるのに、それだけではグラグラと不安で仕方なくて。



 寂しいときも、不安なときも、嬉しいときも。

ただ信じ続けられる言葉が、欲しかった。



「……た、いち…さん」


 ────待っていて、いい?


 涙で、顔も頭の中もぐしゃぐしゃだ。

でも、全て包んでくれるようなぬくもりを手放すのが惜しくて仕方なかった。


「もしかしたら、その間にお前がオレ以外を選ぶかもしれない」


 そんなことないよ。

そう口にしたいのに、震える唇が許してくれない。


「けど、そんときは……力づくでも振り向かせてやるからさ」


 ぎゅうっと力が入っていた腕が、いきなり緩められる。

その息苦しさがちょうどよかったから、あたしはまた涙が溢れた。



「オレ、結構未練たらしいオトコなんだ」


 優しく、笑った。



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