ごそごそとかばんの中から、少し折れた線がはいったクリアファイルを太一さんにそのまま手渡す。

およそ1週間かけて行われた中間試験が終わり、答案用紙も翌日早々に返された。


 今日はそれを太一さんにいち早くみせたくて、学校から走ってやってきた。



「…」

 太一さんは何も言わず受け取ると、パラパラとめくる。


その間は、緊張で手に汗がびっしょりだった。



「ど、どうですか…?」

 あまりにもリアクションがなくて不安になる一方だ。

じっと突き刺さるような視線。


 ゴクリとつばを飲み込む。


でもあたしの焦りとは反対に、太一さんはふわっと優しく微笑んだ。


「よくがんばったな」


 太一さんは答案用紙をマスターに渡して、細長いグラスに氷を入れ始めた。


ようやくその言葉で実感する。


 今まで見たこともない点数が並べられた、あたしの解答用紙。

さっきまでは夢みたいに、嬉しすぎてふわふわしていた。


 手際よく、太一さんはいつものカフェオレを出してくれた。

ひんやりと喉を通っていくのがわかって。その温度にようやく現実味が増した。