ワイシャツにネクタイ、チャコールグレーのズボン。


 それは二週間前にやって来た、あのサトさんっていう女の人と同じ高校の制服だ。


 マスターと同じ格好の太一さんに見慣れていたから、すごくドキドキする。

じぃっと見つめていたら、いきなり鼻をつままれた。


「はっ…、はにふんへふかぁ~」

 言い終わると同時にぱっと手を放してくれて、ようやく呼吸が楽になる。


「口開いてたぞ」

 太一さんはおかしそうに喉を鳴らしながら、あたしを通り越して店内の奥に入る。

 きっと、あたしは口を開けたまま見つめてしまっていたんだ。


恥ずかしいことこの上ない。



 スカートをきゅっと握ってなんとか胸に閉じ込める。

マスターに手招きされて、ようやくいつものカウンターの席についた。


「もう来るよ」

 奥をチラリと覗いたマスターが教えてくれたとおり、すぐにやってきた。

でもその瞳は少しだけ険しく感じた。


「…で?」


 言いたいことはただ一つ。

それはあたしにだってわかった。