真っ青な空を背負う、ピンク色の花びらは───あたしには切なすぎた。

見上げれば、ずっと雲の遠くでエンジン音を響かせる飛行機。



 もう、時間は迫っていた─………




 受験はなんとか合格した。

絶対無理だって思っていた、あの高校に。


 見守ってくれたお父さんや雛太、杏ちゃん……それに、太一さん。

たくさんの人に助けられて、今のあたしがある。


 もしかしたら、そういうのを気づかせるために『卒業』ってあるのかもしれない。

…───なんて、すこし余裕の出来たあたしは思った。



 卒業制作は順調に完成し、次の新学期に正式に飾られるらしい。

桜の花びらを受けながら、あたしたちの思い出と一緒に、また新しい生徒たちを迎えるんだそうだ。


「ねえ未来、バレンタイン渡せたんでしょ?」

 卒業式の練習中だというのに、あたしの前に座っていた杏ちゃんが振り向いてニヤニヤと笑ってきた。


 受験の日、テストを終えて雛太と学校へ報告し、不安と寒さで肩を落としながら家に帰るときだった。

言わなくても待っていてくれた杏ちゃんは、校門の外でにっこりとヒマワリみたいな笑顔で出迎えてくれた。



「これで気兼ねなくバレンタイン、渡せるね!」

と、すっかり忘れていたことを口にした。


 それから慌てて作ったんだけど……


合否発表の日を思い出すだけで、のぼせそうだった。



「……─うん、なんとかね」

 雛太に手伝ってもらったんだけど…それは、秘密にしておいた。