にっこりと微笑んだチビ助の頬が、不意にきらりと濡れる。

二人ではっと顔をあげると、ソコには羽根が舞うように小さな粉雪が降り始めていた。


「わぁ、雪……」


 天を仰ぐチビ助の瞳はキラキラと輝き、真っ白な息と引き換えに無垢な雪を集めるようだった。


 触れては消え、落ちては溶け。

それを見守るチビ助の横顔に、ぎゅっと胸を締め付けられる。


「あ、そうだ!」

 何かを思い出したチビ助は、もう一度かばんを漁り、またもや何かを取り出した。


 しかし、それはもう見覚えのあるもので……。

でも、どうして突然それが現れたのかわからなかった。



「“先生”…ありがとうございましたっ」


 手渡してきたのは小さな花柄の紙袋。

オレは開けなくても、その中身を知っている。


「……あと…、太一さん……」


 小さな甘い香り。

白雪をその髪や頬にそっとのせるその笑顔は、体中をトクトクと優しい鼓動で温めていく。



「ハッピーバレンタイン!」




 ……───丸ごと、オレの心を溶かすように。



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