その表現の仕方も、その口調も。

醜い嫉妬も包んでくれるように、愛しい。



 不意に体を離され、顔を真っ赤にしたチビ助は驚いたように見上げてきた。


「なんで太一さんが泣いてるの?」

「え……?」


 小さな手のひらがオレの頬を撫でるように包み込んだ。

その冷たい指先は、体温をぐんぐん上げる熱いオレの目元をそっとなぞる。



 いつの間にか、涙が溢れていた。



 なんでオレ、泣いてんだ?

“先生”なのに、チビ助の疑問に答えられなくて。


 ……でも。


「あはは、太一さんってばカワイイ」


 ほんのり目尻光らせたチビ助が、笑った。


 オトコにカワイイなんていうなよ。

思ったけれど口にはせず、乱暴に手のひらで拭った。


そして、肩にかけていたカバンからガサガサと一枚の紙を取り出し、オレの目の前に掲げる。



「ほら、ね?あたし、太一さんの後輩になれるの」


 オレの、って言い方────無性に嬉しくて。


「…ばーか」

 いつもの覇気も忘れて、オレはチビ助のクセ毛を出来るだけ優しく撫でた。