フォーチュンクッキー

 驚いたような、でも、どこか嬉しそうな。

目が合うと、オレはどうしても視線を外せなかった。


 …──わかってる。

アレは単なるあてつけだったことくらい。

だけど、オレが離れてる間、チビ助に何かあったら、こうして駆けつけられない。


悔しいくらい、くっきりと不安を浮き上がらせた。



「……じゃあ、そういうことで」

 チビ助の隣ですましていた雛太くんはそれだけいうと、ふいっと踵を返し、一人、駅のほうへ向かってしまった。


「雛太、またあとで学校でね!」

 その背中を、チビ助は嬉しそうに手を振って見送っていた。

そんな笑顔、見せてやることないのに。


 小さくなるまで見つめていたチビ助は、向き直ると一歩オレに近づき、言いにくそうにもじもじと身体を揺らす。


「あの、雛太がへんなこといってすみません」


 どうしてお前が謝るの?

まだ整わない息を吐き出しながら、オレはチビ助の言葉を待つ。


「えぇっとですね、…あの、あたし。どうしても太一さんに会いたくて……」


 頬を赤らめながら伺うように見上げてくる。


 そういわれて、オレが怒るとでも思っていたのか?

いや、おそらく準備の邪魔をしたくないってキモチがチビ助を抑えていたはずだ。


「…電話、…こないから……心配した…」


 思い切り自転車を漕いだせいなのか。
もしくは不安に掻き立てられた心臓が、素直に反応したからなのかはわからない。

とにかく、暴走していた呼吸と鼓動が、ようやく言葉に出来るほど正常になり始めていた。