はあっ、はぁっ……。


鈍くさいあたしは足を必死に動かした。

商店街を抜けて目的地はもう目と鼻の先。


 カランッ

思わず強めに扉を開けてしまった。



「いらっしゃい、未来ちゃん」

 カップを拭きながら、あの優しい笑顔で出迎えてくれたのはマスター。


「こんにちは、マスター!」

 息を切らしながら微笑み返す。


 あたしが行くといつもいる太一さんの姿を探す。

でも珍しく見当たらない。



「あのっ、太一さんは…?」


 扉から手を離したときだ。

 閉まる音の変わりに二つに結ってる髪の片方が引っ張られた。

後ろに体重が傾いて、なんとか態勢を直そうと手をバタバタさせたものの間に合いそうになかった。


 背中には床や扉の衝撃を覚悟したけど、トンっと暖かい温もりが広がった。


「慌てすぎ」

 後ろから降ってきた声に、勢いよく振り返る。



 そこにはあたしの探してた人。


「太一さん!」