「きゃぁぁああっ、お父さんこぼれてるーっ」

「え、あぁ、本当だ。すまんすまん」


 ……―いつもに増して騒がしい店内。


「これ使ってください」

「すみません、マスター。父ったら……」


 んもう、と頬を膨らますその愛らしい顔は、ようやくスッキリしていた。


「あははっ、やっぱ親子だね~」

「キョンも人のこといえないだろ」


 そして微妙に雰囲気を変えた二人もまた、どこか肩の荷が下りたようだった。


「太一くん、お手洗いはどこだったかな…?」

 眉をハの字にまげて苦笑いしてきたチビ助のお父さんは、どこか嬉しそうに尋ねてきた。

「そこの奥ですよ」

 カウンター沿いの壁際にある扉を指差す。

すまんね、と後頭部に手を当てながらひょこひょこ歩く姿は、もう怪我の後遺症なんて感じさせない。


「ほら、足りないだろう?」

 カウンターの下にしまっていた雑巾を、バタバタしているチビ助に数枚差し出す。

相変わらずまん丸の瞳で、やがて嬉しそうに目を細めた。


「ありがとうございます」

 出会ったときはあんなにあどけなかった笑顔。

今は、ちょっぴりキレイだ……と思ってしまった。



 絶っ対に、口にはしてやらないけど!