「あたし…杏ちゃんと高校離れちゃうの、寂しい…」

「バカ未来!…一人でオトナにならないでよ……っ!」


 叱るような、でも、寂しそうに杏ちゃんはあたしを抱きしめる。

細い腰に手を回して、あたしもぎゅっと抱きしめ返した。


「杏ちゃぁん…っ」

「未来ぃー…っ」



 ちょうどグランドからは、ピーっと笛の鳴る音がした。


冬空は厚い雲を並べて抱きしめあうあたしたちを見下ろす。




 きっと太陽だってうらやましいんだろうな。



杏ちゃんみたいな、素敵な友達がいるあたしが───さ。








 その日は、久しぶりに手をつないで帰った。

目じりに涙をためて笑う杏ちゃんは、やっぱりかわいくて優しい……




あたしの大好きな親友に変わりはなかった。





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