あたしの言葉に雛太は目をまん丸にさせた。

口が半開きになっていたけど、そんなに大きな声で言っていないのに、何をそんなに驚いているのか。

きょとんと見つめる中、雛太は気だるそうに肩を落とした。


「……─ホント、お前はまっすぐにアイツだけなんだな」


 雛太……?

あたしは雛太の言っていることの方がわからない。


「なんでもない」


 そんな気持ちもお見通しなのか、ふっと口だけ緩めて、そのまま席に向かってしまった。




 新年の挨拶と同時に、いそいそとやってきた担任の福原先生。

「卒業制作ですが、今年は中学校の看板を作ります」


 じわじわと身に染みる『卒業』。

先生にとっては何回目かものだけど、あたしたちには人生に一度しかない中学の卒業式。


そして、この母校に残す記念。


 卒業制作は、手のひらより少し大きめの木のタイルをみんなでそれぞれ彫り、凹凸で中学校の名を浮かび上がらせるそうだ。


「授業の合間や放課後、時間を見つけて仕上げてください。もちろん、授業中は厳禁!」


 ベルトコンベアみたく小さな木のタイルと、それより一回り大きいサイズの下絵が流れてきた。


「では、とりあえず始業式なので体育館へ移動してください!」


 あたしたちは、新しいオモチャを見つけたようにソワソワしてた。