また背が伸びたんじゃないかな?

太一さんくらいの目線まで見上げると、すこし鼻を赤くした雛太がチラリと見下ろしてきた。


「ひ、雛太っ!……そ、そうじゃ、…ないんだけど」


 突然の登場と、その言葉の意味にしどろもどろとしてしまう。

それに杏ちゃんと付き合ってることも教えてくれてなかった。


 ……だめだめ!そんな風に考えちゃダメ!!

またネガティブ思考に入りそうな自分をなんとか奮い立たせる。


「珍しいこともあるんだな」

 やっぱり元気のない杏ちゃんをみて、雛太は呟いた。


 ケンカじゃない。
じゃあなんなのかと聞かれたら、なんて答えていいかもわからない。


だったら、やっぱり杏ちゃんと初めての『ケンカ』なのかもしれない。


 あたしも口に出さないことで、太一さんや杏ちゃん……それに、雛太を傷つけた。

けど、この前の話は違う。


 太一さんと二人で、一緒に決めるんだ。

杏ちゃんの言葉は本当に嬉しい。


それでも、あたしたちが納得しなかったら、やっぱり後悔するのはあたしたちだから。


「雛太は、さ。…なんか聞いてない?」

「……なんでオレが」

 勇気を振り絞って聞いてみたのに、雛太ときたら面倒くさそうに目を細めた。

寒い廊下から逃げるように二人で教室の戸を閉めて、壁に寄りかかった雛太を疑問の目で覗き込む。


「杏ちゃんと付き合ってるんでしょ?」